一般社団法人 熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

都市政策研究機構が熊本に誕生

■なぜ研究所なのか

熊本市都市政策研究所は、平成24年4月1日の熊本市の政令市移行を契機に開設が構想され同年10月1日に発足したものです。現在わが国には20の政令市がありますが、それらの約半数の都市に同様の研究所が設けられています。また市政研究所の始まりは1906年設立のニューヨーク市政調査会だと思います。そこの所長であったビアードを招いて当時の東京市長・後藤新平は東京市政調査会を1922年に設立し、その後に安田財閥の寄付を得て活動拠点となる市政会館を日比谷公園の一角にある日比谷公会堂に設けました。現在は後藤・安田都市研究所と名称を改め、調査研究業務の他、市政専門図書館の運営、機関誌『都市問題』の発行等を行っています。ニューヨークと東京にみられるように大都市は、大きさの魅力と可能性を秘めていますが、同時に危険性や課題を有しています。そこで、独自の調査研究機関を置き大都市の利点を活かし課題の克服に適う政策立案が常に求められるわけです。そこで熊本市にも都市政策研究所が置かれることになりました。


■使命と役割を明確に

研究所は政令市熊本にふさわしい都市政策を展開するシンクタンクとしての役割を担うものです。日本のシンクタンクは1960年代の終わりから次々と誕生し、その役割も順次進化してきました。この種のシンクタンクに現在求められるのは、第一に調査研究機能であり、政策課題への科学的アプローチでの取り組みです。行政経験で得られた数々の経験知(暗黙知とも言います)を一般解として使える形式知に導き変える仕事です。そして二つ目が人材育成機能で、特に政策立案能力の養成に傾注します。行政に身を置く人は、施策の執行や事務処理能力に長けています。基礎自治体である市町村の職員のこれまでは、施策執行能力や行政事務の処理能力が備わっていれば十分だったわけですが、近年は分権化の影響もあって政策を企てる能力が強く求められ、特に政令市ではこれが顕著です。それを支援するのも大きな任務です。そして三つ目として情報の受発信があります。現在は高度な情報社会ですので、広く有効な情報を収集し、逆にこちらの情報を広く発信することが肝要です。調査研究、人材育成、情報の受発信を三本柱として研究所の運営に努めます。


■取り組みの今、そしてこれから

研究所は、市役所本庁舎の13階に開設され、総勢9人の専属職員からなり、他に市の12局1委員会から各二名ずつ26人が登録研究員となっています。調査研究の内容は、当面のスタートアップ研究として熊本市がどういうところなのかを明らかにする地域認識研究、熊本がどのように発達してきたのかを知る歴史認識研究の二本立てで進めています。熊本市という地域をよく知り、熊本の都市政策の歴史を踏まえた上での新しい政策となるよう、創造的なまちづくりに繫がる研究に取り組んでいます。今後は、以上の研究に並行して都市の本質の関わる研究、都市の生活に関わる研究、都市の産業に関わる研究の3分野へと広げていきたいと考えています。人材育成については、一人でも多くの職員が都市政策研究に携わり、経験の機会を持つことが重要と考えます。講師としておいでいただいた第一線の先生との交流の機会を作ることで自己研鑽が進むようにしていきたいと思います。情報発信については緒に就いたばかりですが、HPの充実に努め、ニューズレターや年次報告、講演記録集など紙ベースでの発信にも努め、IT時代の利器を活用し、かつ73万市民の多様な受け手に情報が届くよう努力します。企業もそうですが、研究所が成長するためには需要の創造が不可欠ですので、皆様のご助言をよろしくお願い申し上げます。


2013年7月号掲載

熊本市都市政策研究所 所長 農学博士
蓑茂 寿太郎

昭和25年2月23日生まれ、農学博士。
東京農業大学農学部卒業、平成7年東京農業大学教授、16年副学長、平成18年4月公立大学法人熊本県立大学初代理事長、熊本県立大学教授。
日本学術会議連携会員、日本造園学会会長、日本都市計画学会副会長を歴任、現在農村計画学会副会長。
一般財団法人公園財団理事長、東京農業大学、熊本県立大学客員教授、ランドスケープアーキテクト連盟会長

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