各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
人材不足解消の鍵としての生産性向上と多様な人材活用
このたびは、震災により被災された皆様にお見舞い申しあげます。熊本地震からの復興に向けて動き出した矢先に、阿蘇山の噴火があり、今後も様々な影響が懸念され、しばらく厳しい状況が続きそうです。
本研究所の目的は、産業・経済およびこれに関連する事項の調査研究をおこない、地域の産業経営の発展向上に寄与することです。今回の度重なる被災により、当研究所のあり方を改めて考え直す機会を与えられました。
研究所設置の1959年当時は熊本であまり付加価値を生み出せていない、県内に残るはずの富がより多くあるべきという問題意識から、研究所を中心に産金官学が一体となり調査研究を行い、各種の提言を行ってきたということです。熊本地震の影響は直接被害、間接被害を含めて甚大であり、今こそ、当研究所の設立趣旨に則って、地域に貢献していかなければなりません。
研究所による当会への関与事業の一つとして、景況調査があります。調査項目のなかに、現状の課題と課題に対する取り組みがあり、ここ数年では、会員における人材不足の問題の順位が上がってきました。人材不足の背景には、団塊世代の大量離職があり、長期的な景気の低迷や、就職の選択の多様化のなか後継者を育成できなかったということもあります。特に、建設業などはその典型で、直近では仕事をこなせないくらい需要が多いが、阪神・淡路大震災、東日本大震災の経験から、いずれ仕事がなくなり倒産企業が発生するという教訓もあり、容易に答えを導き出せない状況にあります。
では、事業者としてどのような対応をとっているのでしょうか。求人広告を出しても応募が少ない現状ですので、社員教育に注力されているようです。社員教育は重要で、理念教育をはじめとする人としてのありかたに関する教育、それぞれの業種で求められるスキルに関する教育を行っていき、知識・技能の伝承に注力されている企業もあります。
社員教育に関連する人材不足の解消策の一つとして、生産・サービス活動の見直しによる生産性の向上があると考えます。例えば、これまで1つの作業を10人で行っていたものを、工場現場の作業改善によって、9人、8人と減らすことで生産性を向上させます。そして、次が重要なステップで、作業効率をあげて、生み出された余剰人員を他の作業で活用することです。現状では、製造業中心の活動ですが、サービス業でも同じことは可能なはずです。これは、人材不足の問題解決策の一つになるのではないでしょうか。そして、他地域でも盛んに行われている自社による生産性向上活動の仕組み作りの支援について、当研究所としても関与できないかと考えています。
次に、別の解消策として、主婦層や高齢者の活用をはじめ、多様な人材を活用していくこともあるでしょう。これには、制度上の問題も含めて課題山積です。当研究所では、女性が活躍できる社会のあり方、高齢者の健康寿命の延長と労働の担い手の活用のあり方といった問題についても、継続的に調査・研究を行ってまいりたいと考えています。
最後に、熊本経済の益々の発展には、雇用創造も重要で、そのためには創業件数を増やすことも必要であると考えています。つい先日のことですが、熊本学園大学出身の経営者が多いという新聞報道がありました。その流れを引き継ぎ、企業家精神をもち、社会で活躍できるような人材教育に大学としても取り組んでまいります。
2016年11月号掲載
熊本学園大学専門職大学院 准教授
産業経営研究所所長 公認会計士
吉川 晃史
1979年10月、大阪府生まれ。あずさ監査法人勤務を経て、2011年3月、京都大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(経済学)。熊本学園大学商学部助教、熊本学園大学会計専門職大学院専任講師を経て、2012年4月より熊本学園大学会計専門職大学院専任准教授(~現在)
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