各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
事業の本質を考え直す・人間ありきの革命
昨今、様々な機会にIoT(モノ同士が繋がったインターネット)、第4次産業革命、シンギュラリティなどと耳にします。私も東京にいた頃であれば、「進歩(流行)」を追わされていました。
しかし3.11をきっかけに私自身が熊本(南阿蘇~天草)に移住、暮らして実感するのは、大地や海や自然、そして人のつながりこそが幸せということ。「ここではないどこかに進んだ技術があって、それについていかないと置いてきぼりになって仕事がなくなる。」そんなメッセージに騙されるなら、ついていくために、時間やお金や生きている実感を奪われることになります。
私たち中小企業、自営業者が思い出さなくてはいけないのは、私たちにこそ価値があるということ。技術に使われるのではなく、どう使うか、どう役立てればいいのか。それさえわかっていれば、AIやビッグデータ、IoTや第4次産業革命の力を手にできます。
人類の課題である、飢餓・戦争・疫病・環境破壊・格差は、技術や経済成長によって解決できる!と思われていますが、これ、人間がお互いに富や知恵をわかちあわないからですよね。産業革命以降、技術が発展し、人類は進化?したのかもですが、実際、幸せになったのでしょうか?
これを何とかできるのは、大企業でもAIでも技術でもない。地域にある小さな事業者です。多様な地域で各々が自らの足で立ち、連携しあい助けあう、自律分散型社会です。そのための技術です。”そう思えばそう”なんです。中央集権型の20世紀のやり方が残って格差社会になってきた、そこから進化し、自律分散型の21世紀を地域主導に取り戻すのは私たちです。
たとえば、自動車整備業。部品はアナログなわかりやすいものからコンピュータ化され、メーカーでしか対応できなくなってきています。地域の整備業者は何を提供していくのでしょうか?エンジン車は趣味のものでEVしか公道は乗れなくなるといったことも考えられます。どんな手があるでしょう。
自社の事業のあり方の本質を捉えなおすならば、様々な道も考えられます。
【運】エンジン車からEVにシフトする。
【窓】 顧客チャネル・受付・お客様のおもてなしに特化。メーカーとのつなぎ役に徹する。
【遊】 生な経験を欲しがる層へ。エンジン車の趣味人を相手に事業化する。
【遊】 メカニックの立場から楽しめる仮想ドライブレースゲームを開発する
【遊】 EV車用のアスレチック場を公道外で始める。特殊車製造も担い、メーカーにリクエストを伝えたり、EV用のプログラムを開発する。
【修】 世界中のアナログ車整備を5Gネット*VRを通じて行う。(競争ではなく熟練工世界ネットワークを主導編成して共創。)EV車に対しては、メカニック向けのAI/ビッグデータ利用サービスを共同で開発する。
【着】 EVはデザイン的遊びが多い。車をファッションとして捉え、顧客ごとのビジュアルやデザインのカスタマイズを提供。
【福】 公道用以外の福祉用車両、屋内用車両、ロボット用車輛の分野に進出する。EV活用。
といったあたりでしょうか?技術に使われるのでなく、メカと人に接している点を活かすために技術を使うなら発想は広がらないでしょうか。次世代に向けてどう投資するか、どう人を育てるか、人を採用するか、一度考えてみてもよいのではないでしょうか。
考える枠組みを変えるだけでもいろいろ知恵は出ます。地方創生だって、地方「を」創生するのでなく、地方「が」都市を、「日本を」創生すると読み替えることで、多様な地域がネットワーク的に繁栄する日本が見えてきます。結局、「人」からしか始まりません。同友会における人のネットワークにこそ、未来へのカギがあると私は信じています。
2018年11月号掲載
天草市起業創業・
中小企業支援センター
アマビズ センター長
内山 隆
富山県出身、1966年生まれ。
アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)にてコンサルティング業務に従事。独立後は企画・製作会社やIT企業にて、制作サービスに携わる。NPO立ち上げ等の後、2015年より現職。
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