各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
見通しがたい日々の中で
新型コロナウイルスが私たちの前に出現してから、およそ2年が経ちました。感染拡大と縮小の波を繰り返し、第5波がピークアウトした昨年秋から、熊本はかなり落ち着いた状態が続きました。ワクチン接種が進み、もうそれまでの1年半のような状況に陥ることはないのではないか――感染症の行方に警戒感を持ちつつも、そんな期待を持たれていた方もおられたのではないでしょうか。そうした中、日本から遠く離れた南アフリカの地で、新しい変異型ウイルスの存在が確認されました。このオミクロン株による年明け以降の熊本県内での急激な感染拡大の推移は、ご承知のとおりです。
ほんの少し前までは、オミクロン株などという単語を知っている人はいない世界でした。今は知らない人を探す方が難しいでしょう。目まぐるしく世界が変化していきますが、明日がどのような世界になるのかを正確に知ることは、私たち人間には不可能です。それほど世界は不確実性に満ち溢れていて、先の見通しが難しい日々が続いています。
しかし、有史以来、人間はそうした不確実性の中にあっても、その時々に得られる情報を可能な限り集め、分析し、それを用いて、次に踏み出す一歩の方向を見定めてきたのだと思います。いまを生きる私たちが、見通しが難しい日々の中で将来に向けて行うことも、こうしたご先祖様たちの営みと、本質的に変わるところはないはずです。
それでも、得られる情報の量は、どの時代と比べても格段に違うと言えるでしょう。そして、もう一つの違いは、世界中の人々の間のつながりです。6人の知り合いを辿れば世界中の誰とでもつながることが可能であると言われていますが、情報通信技術の発展と翻訳アプリなどの性能の向上が相まって、誰もが文字通り、世界中の人々との間でつながりを持ち、コミュニケーションを取ることが可能な世の中になりました。このことは、私たち一人一人が、世界中の人間が総体としてこれまで得てきたすべての情報と経験と知恵を、潜在的には利用可能になったということを意味するのだと思います。
私たちは、この、先の見通しが難しい日々に、独りで立ち向かっているわけではありません。不確実性に満ち溢れた世界であっても、過去の先人たちが残してくれたすべての知恵と経験を手に、広くつながり得る世界中の人々と共に立ち向かうことができる――いま私たちが生きているのは、そのような世界でもあります。そうしたことを思えば、次へのしっかりとした一歩を踏み出す力が、心の底から湧いてくるというものではないでしょうか。
2022年3月号掲載
日本銀行熊本支店長
髙野裕幸
1971年生まれ、京都市出身。
94年東京大学法学部卒業、02年ハーバード大学法科大学院卒業。
94年日本銀行に入行、大蔵省主税局出向、政策委員会室企画役、業務局企画役等を経て、18年5月業務局営業業務課長、19年7月金融研究所制度基盤研究課長、21年6月から現職。
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