各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
星を星座に
熊本に参って一年が経ちました。東京に生まれ育った私に は、見るもの聞く話が、一々新鮮で、毎日がサプライズです。
例えば、娘の運動会。朝早くからおばあちゃん達が木陰を陣取り、お昼になれば堂々たるお重を三世代が囲む。家族の形がややこしくなった東京では、今や幼稚園の運動会は、あえて午前中で終わります。
地元の方と新町を歩いていると、女子高生から「さようなら」、小学生から「こんにちは」と普通に挨拶をされる。中目黒ではマンションの住民同士だって言葉を交わしません。
今年で七回目になる、みずあかり。あかりの祭りは全国に多々ありますが、これだけの都会で、市民ボランティアの力だけで5万個の灯篭を手作りしている町はありません。東京や福岡に、この真似はできない。
地方の商店街が軒並みシャッター通り化する中、熊本中心市街地の活気はサプライズです。阪神以西、福岡以外で、これほど元気なのは熊本だけです。これは、商店街のリーダーやボランティアの方々が、ストリートアートやマルシェなど常に新しい挑戦をされているおかげです。
熊本市は、都会でありながら決して殺伐としていない。落ち着いた賑わいがある。資本が作った街である以上に、市民の絆が街を作っている。(私を含む)他県からの赴任者が、こぞって熊本に「ベタ惚れ」する所以は、この「市民力」にあります。
熊本市内に限りません。否、むしろ、熊本市の市民力の源泉は、市外にあると思います。
戦後の困窮期以来、安全で美味しい漬物を作るために今日も革新を続ける下村婦人会は、全国の地域振興関係者が仰ぎ見る北極星です。
朽ちていた八千代座を復興させた山鹿市民の「瓦一枚運動」は、全国の町並み再生のモデルです。熊本城復元募金「一口城主」の成功も、元祖は山鹿です。
まちづくり情報銀行を拠点に住民参加のワークショップを徹底的に重ねた旧宮原町は、携わった若者達を魅了し、今なお全国に応援団を持ちます。
住民自らが地域を素材にテレビ番組を制作する活動を、10年前、全国に先駆けて実践し、東京人を驚嘆させたのは、人口4千人の山江村です
環境破壊が甚大な悲劇を招いた水俣。だからこそ、自然と共生する里山暮らしのありのままの価値をありのまま見せる、水俣市頭石の生活博物館。人口120人の小さな村が、世界の地域づくりの手本になりつつあります。
黒川温泉人気の理由は、泉質でも絶景でも食事でもない。「日本のふるさと」の景観を手作りで徹底的に作り上げた、地域ぐるみの市民力の成果です。
県庁では、新幹線開業に向けて、熊本の魅力をPRする「くまもとサプライズ運動」を始動しました。
「運動」では、美味しい水、食材、温泉、観光地も大いに宣伝します。が、今回、私が、本当に県内外に伝えたいと思っているのは、熊本の市民力です。他県人が熊本に憧れる本当の所以。ネットでは買えない、熊本が持つ最高の宝。県民の、地域への、熱い思いと、深い絆です。
名所や名物と違って、目に見えないものをPRする仕事になります。市民力の結晶を見せるプロデュースの手法、メイキングを見せるドキュメンタリーの手法、星を星座に結ぶ編集の手法など、慣れない工夫を迫られるでしょう。易しくありませんが、挑戦します。お力添えを、お願いします。
2010年9月号掲載
熊本県企画振興部 部長
坂本 基
昭和43年7月29日生まれ、平成3年財務省入省、11年在イタリア大使館、14年財務省大臣官房(法令審査、秘書官)、16年主計局(農林担当主査)、18年国際局(途上国支援、日系企業支援、金融危機対応)、21年熊本県地域振興部長、本年4月より現職
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