一般社団法人 熊本県中小企業家同友会

特集

各界からの提言

各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ

目利きの企業の 知恵と工夫

今秋、企業にとってもうれしくなるニュースが海外から飛び込んできました。皆さんご記憶の中村修二さんのノーベル物理学賞受賞決定です。中村さんが、受賞理由の青色LEDを開発したのは、徳島にある企業の研究室でした。手作りの実験装置の改良を重ね、しかも一人で研究を進めました。会社とは特許権をめぐり訴訟になったものの、同社創業者を、採算を度外視して研究させてくれた「最も感謝する人」と言います。スタッフのそろった、予算にも余裕のある研究室でなくても、世界で認められる製品を生みだすことが不可能ではないことを教えてくれました。


学ぶべきことが多い企業は身近にもあります。人吉市のシャツ製造会社「HITOYOSHI」です。経営破綻した親会社の縫製工場でしたが、役員らが事業を引き継ぐ形で再出発しました。わずか5年前のことです。その後、自社ブランドの高級シャツが全国の百貨店で販売されるようになり、今年9月には香港の「そごう」でも取扱いを始めました。培われた技術、市場の動きをとらえた着想、再建への熱意などが企業力のアップにつながったのではないでしょうか。


熊日は、製品開発や新たな事業に挑む県内企業を応援しています。経済面のコーナー「メードインくまもと」がその一つです。例えば、同コーナーで菊陽町の義歯製作会社を紹介したことがあります。同社は入れ歯の細菌発生を抑える技術で特許を取得し、受注先は関東以西の歯科医院約5000 ヵ所に上ります。ケニアの生地を使ったベビー用品の製造卸会社、タイとマグロから抽出した成分でサプリメントを製品化した会社も登場しました。これまで取り上げた企業は80社を超えました。


熊本は農業県でもあります。そして、元気です。イ草、トマト、スイカなどは全国トップの生産量。県産米「森のくまさん」は昨年の食味ランキングで日本一に輝き、2年前に開かれた国内最大の和牛品評会では、菊池市の畜産農家が育てた黒毛和種が肉牛・去勢肥育牛部門で2位を獲得しました。2013年の県内の農業産出額(推計値)は3280億円で4年連続の上昇。過去10年で最高でした。


トマトを使った洗顔料、素材の風味を生かすため熱風で乾燥させた野菜など地元農産物を利用した商品も生まれています。こんな目利きの企業の知恵と工夫が、相乗効果をもたらしています。


地域に根ざしながらも、国内外の市場を見据え事業展開する意欲的な企業は、県内にも少なくありません。企業の取り組みを見ると、ビジネスチャンスは私たちの身の回りにも眠っています。農産物だけでなく技術力などに秀でた企業、観光資源、伝統文化、人材などの地域特性をどう生かすのか、知恵を絞っていきたいものです。これからも熊日は地域と共に歩み、地域発展に寄与することを念頭に企業の皆様が必要としておられる情報の提供に努めてまいります。



2014年12月号掲載

(株)熊本日日新聞社 代表取締役社長 河村 邦比児

(株)熊本日日新聞社 代表取締役社長
河村 邦比児

昭和25年4月2日熊本市生まれ。 同49年3月慶応義塾大卒。同4月に熊本日日新聞社入社。社会部を中心に編集取材部門を歩き、平成7年八代支社長兼編集部長。同14年総務局長。同18年論説委員長。同20年取締役総務局長兼秘書室長。同23年常務取締役総務担当兼秘書室長。平成26年6月から現職

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