各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
創造的復興につなげるキャリア教育と若者の地元定着
熊本地震の教育界への影響
平成28年熊本地震は、これまでに経験したことのない未曽有の被害を教育界へも及ぼしました。県内の小・中・高・特別支援学校の6割以上に当たる425校が被災し、施設や通学路の安全確保ができず休校した学校も6割以上となりました。200校以上が避難所になり、最大で1日2,000人超の避難者を受け入れた学校もあり、避難所としての利用は長期化しました。そのような中、多くの学校の教職員が粉骨砕身尽力し、5月11日までに全ての学校が授業を再開して、現在は、創造的復興に向けて教育活動を進めています。
創造的復興につなげるキャリア教育
さて、本県は今、震災からの復旧・復興が急務であり、一日も早い被災者の生活再建と、熊本の更なる発展につなげる創造的な復興の実現に向け、取り組んでいるところです。教育の分野では、「郷土に誇りを持ち、夢の実現を目指す熊本の人づくり」を基本理念とする教育振興基本計画の中で、キャリア教育を通した産業人材の育成を目標の一つに掲げています。目標達成のために義務教育段階から地元企業や関係機関と連携したキャリア教育を推進し、地域と一体となって人材の育成に取り組んでいます。グローバル化や情報化が急速に進み、将来が予測しにくい変化の激しい時代であっても、自ら夢を持ち、様々な困難を乗り越え、自分の可能性を信じて自ら道を切り拓く人材を育成したいと思います。
そのことが、ひいては熊本の創造的復興を支える人材の育成につながるものと考えております。
若者の早期離職と県外流出
一方で、克服しなければならない課題もあります。高卒者の求人数は、リーマンショック以降年々増加しているものの、生徒と企業の間にミスマッチが生じ、早期離職に至るケースが見られます。本県の場合、新規高卒者の3年以内の離職率は、ここ数年、全国平均より数ポイント高い状態で推移しています。また、平成28年3月、本県を卒業した高校生の県内就職率は、約58%と全国でも5番目の低さでした。とりわけ工業系高校においては、県内就職者数は約3割に留まっており、農業系・商業系高校がともに約7割であるのに比べ、県外への人材流出が顕著となっています。
若者の地元定着に向けて
このような現状を踏まえ、県教育委員会では平成28年4月、工業系高校全てに、「しごとコーディネーター」を配置しました。生徒や保護者に対し、これまで知り得なかった県内企業の魅力や情報を提供することが目的です。学校と行政、事業主団体等の連携を深め、互いが雇用環境の現状を知り、課題についても共通認識を図っています。
創造的復興の実現には、若者の地元定着が不可欠です。キャリア教育をこれまで以上に推進し、創造的復興を支える人材、ひいては地域産業を支える人材を育成して参ります。一層の御支援と御協力をお願いします。
2017年2月号掲載
熊本県教育長
宮尾 千加子
昭和33年荒尾市生まれ。昭和57年熊本県庁入庁。商工観光労働部くまもとブランド推進課長、商工観光労働部商工労働局長、環境生活部政策審議監を経て、平成28年4月より現職
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