各界から熊本同友会会員へ向けた熱きメッセージ
次の20年に向けたものづくり人材育成~熊本県立技術短期大学校の取り組み~
熊本県立技術短期大学校は平成9年4月に開校し、昨年20周年を迎えました。この間、皆様には様々な形で支援していただき、厚くお礼申し上げます。
本校の基本理念は、本県の産業の高度化、高付加価値化に対応できる高度な知識と技能を兼ね備えた実践技術者を育成し、本県の発展に寄与することです。開校時から三つの目標「地域に密着した人材育成」、「地域産業界に開かれた大学校」、「地域産業の技術の連携・交流への寄与」を掲げ、県産業の技術力アップに取り組んできました。また、本校はこれまで約1800名の技術者を輩出し、開校以来ほとんどの年で就職率100%を維持しながら地場および県内誘致企業の「ものづくり」を人材の面から支え、県内産業界の活性化にも貢献してきました。
ただ、日本の最近の製造業の流れは大きく変わろうとしています。人材育成や技術力に関する考え方にも変化が見え始め、本校における人材育成も見直す必要があると感じています。その一例として、最近、ニュースで話題になった東芝とシャープは、経営不振を虎の子の技術を手放すことで存続を図ろうとしました。技術の流出や国際競争力の低下が懸念されていますが、それよりも個人的には苦労して開発した技術を手放すことによる技術者の意欲喪失を心配しながら、技術に対する新しい考え方も感じています。また、一部とはいえ、一流企業で最終の検査工程で資格未取得者が検査を行ったニュースは、技術に対する技術者のプライドが気がかりです。これから先も先端技術の開発は必要ですが、基盤技術をしっかりと支える人材は依然として重要な存在と考えています。
このような状況に加えて、次の20年はグローバル時代、人口減少の時代、高度情報化の時代と言われています。産業界では、物のインターネットIoT、人工知能AI、ビッグデータ、ロボットなどが注目され、「第四次産業革命」などの概念に基づくものづくりが進んでいくと言われています。そんな変革と多様性の時代、県内の製造業にも技術革新の波は少しずつ押し寄せています。この波を乗り越えるためには、それに対応できる技術力と人材が必要になってきます。技術については、これからオープン・イノベーションの考え方も取り入れながら、熊本特有のスタイルで関連企業、団体が中心になって築いていく必要があります。我々の一番のミッションはその技術革新にも対応できる人材を育てることです。2年間の教育期間を考えて、技短がターゲットとするのは、生産現場で必要な「実践知」を持ちながら、研究開発、設計、生産技術などの部門とも連携する能力を持った人材を育てることです。具体的には、本校 の卒業生が一人の人間として、また10年後、20年後も輝いている技術者として活躍することを目指し、次の20年に向けた人材育成を今年から20周年+1(プラスワン)事業として開始しました。「技短は変わります」を合言葉に、①学生が将来を考えやすい入学制度、②IoT、AIを含め、これからのものづくりを意識して基礎力、考える力、挑戦するマインドを育むためのカリキュラムの充実、③資格取得や外部のコンテストなどへの積極的な参加による教育成果の見える化と地域連携の強化に取り組んでいます。本校は「いつの時代でも、どんな場面でも対応できる確かな基礎力と応用力を兼ねた人材育成」で、地域の企業と一緒になって熊本県産業界の一層の発展に貢献していきます。
2017年12月号掲載
熊本県立技術短期大学校
校長
里中 忍
1948年5月20日生まれ、鹿児島県出身、熊本大学工学部生産機械工学科卒、大阪大学大学院工学研究科博士課程修了、工学博士(大阪大学)、専門分野は機械工学、溶接工学。熊本大学工学部助手、助教授、教授を経て2014年 4月から熊本県立技術短期大学校校長、熊本大学名誉教授、その間、オハイオ州立大学客員教授、熊本大学工学部長、熊本県溶接協会顧問・溶接技術競技大会委員長などを歴任
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